凹んでいるのが活版印刷!?

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今年も残すところあと3日になりました。
今年の元日からスタートした「印刷見聞録」も丸1年が経とうとしています。
この1年はちょっとした活版印刷ブームが起こり、この印刷見聞録や弊社ウェブサイト「印刷の悉皆屋」を通じて、弊社にもたくさんの方からお問合せやご発注をいただきました。

そのような中で、皆さんがご発注に際し必ずおっしゃるのが、「(少々文字などが潰れてもいいので)凹むぐらい強く圧をかけて印刷してください」というご要望です。また「印刷がかすれていてもかえって味があるのでかまいません」とおっしゃる方も結構いらっしゃいました。

皆さんからのご要望は出来る限り汲みとるようにはしたつもりですが、これらのご要望に一番困惑したのが、活版印刷の職人さんです。なぜなら、上記のご要望はすべて職人にとっては「へたくそ」に印刷してくれ、といわれているのと同じ意味だからです。
確かに活版印刷はオフセット印刷など他の印刷技法にくらべると、安定した印刷が難しいのは事実です。それでも、優れた職人さんはじっくりと時間をかけて版の高さを文字通り薄紙1枚の単位で調節して、ムラのない美しい印刷を心がけてきました。(それがスピードと低コスト合理化の時代に生き残れなかった理由でもあるのですが・・・)

また、もともと活版印刷は主に書籍印刷によく用いられていたため、両面印刷が多かったのですが、片面を凹むほど印圧をかければ、もう一方の面が凸(つばく)んでしまい、かと言って印圧が少ないと、かすれて濃度が薄い読みにくい印刷になってしまいます。故に凹まない程度に強く印圧をかける技術が職人の矜持なのです。こういった活版印刷の職人さんの想いも少しはリスペクトされたらなあ、というのが今年の活版印刷ブームに対する私の正直な感想でした。ちなみに弊社の職人も皆さんのご要望に対してどこまで対応したらよいのか、結構悩んだようです。
「凹んでたり、かすれたりしていない活版印刷なんて、オフセットと見分けがつかないじゃないか」というご意見もあるかもしれませんが、見る人がみればやはり違いははっきりありますし、また和紙など印刷できる紙の範囲が広いことや、独特のベタ濃度など活版印刷ならではの特性もいっぱいあります。
ですから、今年1年のブームで終わることなく、来年も活版印刷の良さや素晴らしさをご理解いただける方が少しでも増えることを願っています。

最後になりましたが、今年1年この印刷見聞録をお読みいただいた皆様、本当にありがとうございました。
拙い文章ですが、来年も続けていきたいと思いますので、これからもよろしくお願いいたします。

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プロフィール

堀尾武史
株式会社からふね屋 代表取締役

昭和36年生まれの丑年
京都生まれ京都育ちの印刷屋四代目社長。
小学1年から大学4年まで剣道にひたすら明け暮れ、一応各年代で全国大会には出場、入賞なども果たす。
同志社大学卒業と同時に親戚の印刷会社で修行、ここで大いにしごかれ現在に至る。
自社にあった活版印刷から写植、フィルム時代を経て現在のDTPまでひと通り印刷については経験、美しい印刷を愛す。
趣味はお酒とアート鑑賞、読書、音楽(JAZZ・ROCK・POP・REGGAE・CLASSICなどオールランド)、TV鑑賞(ガイアの夜明け・カンブリア宮殿・たけしアートビートなどがお気に入り)、ウォーキング。