今さら聞けない印刷用語集 その14「デザイナーとDTPオペレーター」

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現在の印刷のワークフローは、デザイン・レイアウトをPC上でアプリケーション・ソフトを使って印刷用のデータに仕上げ、そのデータを出力したものを印刷する・・・、という形が主です。
そしてこの工程で、デザイン・レイアウトを行うのが「デザイナー」の仕事で、印刷用データを作るのが「DTPオペーレーター」の仕事となるのですが、実際のところはその境目は非常に曖昧です。

DTPが主流になる以前の「アナログ」の頃は、デザイナーはデザイン・レイアウトを「版下」という製版のベースになる文字や線画、罫線やトンボを配置した台紙にして、画像用原稿といっしょに入稿するところまでが仕事で、その版下をもとに製版作業を行い、印刷用の版を作るのが、製版会社のオペレーターや印刷会社の仕事と明確に分かれていました。

ところが、デジタル化した現在では、デザイナーはそれまでの版下にかわりに、PCで作ったデータを入稿するようになり、また従来はポジフィルムや印画紙などで入稿していた画像原稿も、デジカメやスキャナーの発達で、直接データにレイアウトした状態で入稿できるようになりました。
つまり、(完全、不完全はさておき)デザイナーが一人ですぐに印刷用データを作ることも可能になったのです。

一方、例えば弊社の製作スタッフのように、印刷用データを作成できるDTPオペレーターのスキルに加え、デザイン・レイアウトもこなせる場合もあり、この場合も一人ですべての作業をカバー出来るわけです。

そのため、どこまでがデザイナーの仕事の領域で、どこからがDTPオペレーターや印刷会社の仕事になるのかが非常に分かりにくくなっているのが現状なわけです。

この問題は、単に仕事のスムーズな進行だけに留まらず、ギャランティーの問題を大きく関わっているだけに難しいと言えます。

例えば、印刷会社への入稿がそのまま刷版などに出力可能な印刷データ(通常、完全データと呼んでいます)という条件の見積りの案件で、

  • スキルを持ったデザイナーが完全データを用意した場合、デザイン費に加え、DTPオペレーション費が請求できるのか?
  • 入稿されたデータが完全でなくオペレーターによる作業が必要な場合、そのフィーは誰が負担するのか?

といった問題がありますし、もっと曖昧に、単に「データ入稿」という抽象的な表現で見積りを取り交わした場合、DTPオペレーション作業はそもそも誰が負担し、そのフィーは見積りに含まれているのか?というようなことが日常茶飯事に起こっているのが現状です。

特にクライアントにしてみれば、そのへんのデータのやり取りに関する知識はほぼ皆無なのが普通ですし、見積る側の印刷会社なども見積り段階で「データ入稿」と言われても、実際にデータを見てみるまではデータが完全か不完全かとか、単なるデザイン・レイアウト指示だけのデータなのかがまったくブラックボックスの場合が多いのです。

またアナログ時代は、デザイナーも製版・印刷会社も双方の領域の専門性が高く、職人的な世界があって、相互不可侵な関係であり尚且つお互いにある種リスペクトが感じられていたのですが、デジタル時代の現在は省力化、スピード化など様々なメリットを生み出した一方、それぞれの専門領域に簡単に踏み込めることによって、総合的に印刷物としての高いクオリティが果たして維持できているのかという問題も孕んでいます。つまり印刷のクオリティ自体は確かに相対的に向上していますが、レイアウトやデザイン、画像の美しさという点においては安易さが感じられる印刷が増えているように思うのです。

そして、その現状に比例してプリプレス費はデジタル化による省力化、効率化による効果以上の勢いで低価格化の一途をたどっていますし、デザイナーやカメラマンなどクリエイター側のギャランティも年々下落しているのではありませんか?

この現状を打破するためには、DTPオペレーターをはじめ印刷会社もさらにDTPオペレーション力や印刷の技術を磨くとともに、日頃から美的感覚やデザインセンスも取り入れる努力が必要ですし、デザイナーなどクリエイターの方々も完全データまで創り上げるスキルは必須ではないにしても、データで入稿するスタイルを取り続けるなら、デザイン意図がより反映された印刷を仕上げるためにDTPオペレーションに対する知識は最低限持ちあわせておく必要があると思います。

そこで今回ご紹介するのが、エムディエヌコーポレーションから発刊されている「新詳説 DTP基礎」という本です。


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新詳説DTP基礎[改訂三版] (MdN DESIGN BASICS)


つい先ごろ【改訂三版】が発行されたのですが、DTP全般についての基礎知識が非常にコンパクトにわかりやすくまとめてあり、これからDTPに関わろうとする初心者の方はもちろんのこと、編集やデザイン、カメラマンの皆様にもご一読いただきたいと思います。

そんなこと「初めから知っているよ」というような内容も多いとは思いますが、なかなか私達印刷会社の立場でもこの本の内容をすべて理解しているかというと、ちょっと心もとないところもありますので、広く知識を身につけるにはうってつけの本といえます。しかも最終章では今話題の電子書籍についても触れていますので、仕事場に是非一冊お薦めいたします。


今さら聞けない印刷用語集 その1「くわえ」
今さら聞けない印刷用語集 その2「ダブルトーン 」
今さら聞けない印刷用語集 その3「版下」
今さら聞けない印刷用語集 その4「取り都合」
今さら聞けない印刷用語集 その5「付け合わせ」
今さら聞けない印刷用語集 その6「トンボ」
今さら聞けない印刷用語集 その7「塗り足し」

今さら聞けない印刷用語集 その8「オーバープリント」
今さら聞けない印刷用語集 その9「ピンホール」

今さら聞けない印刷用語集 その10「経済ロット」

今さら聞けない印刷用語集 その11「クレーム」

今さら聞けない印刷用語集 その12「Mインキ・Sインキ」

今さら聞けない印刷用語集 その13「オンデマンド印刷」

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プロフィール

堀尾武史
株式会社からふね屋 代表取締役

昭和36年生まれの丑年
京都生まれ京都育ちの印刷屋四代目社長。
小学1年から大学4年まで剣道にひたすら明け暮れ、一応各年代で全国大会には出場、入賞なども果たす。
同志社大学卒業と同時に親戚の印刷会社で修行、ここで大いにしごかれ現在に至る。
自社にあった活版印刷から写植、フィルム時代を経て現在のDTPまでひと通り印刷については経験、美しい印刷を愛す。
趣味はお酒とアート鑑賞、読書、音楽(JAZZ・ROCK・POP・REGGAE・CLASSICなどオールランド)、TV鑑賞(ガイアの夜明け・カンブリア宮殿・たけしアートビートなどがお気に入り)、ウォーキング。